最強の営業マンとはどのような営業マンか?

BtoBの現場では「売上を上げる営業マン」と「顧客から信頼を得る営業マン」がいる。

前者は毎月の売上目標にコミットする短期視点、後者は顧客の利益にコミットする長期視点であることが多いのだが、なぜか両方を完全に兼ね備えた営業マンは少ない。

私が起業して会社を経営をするようになり、その理由を理解することができたので紹介したい。

売上を上げる営業マン

売上を上げ続ける営業マンは売上目標を達成することが正義である。
顧客の業績は関係なく、お客さんが喜んで買ってくれればそれで良いと心から思っている。

だからこそ、お客さんが買う理由を探し出し、営業トークを組み立て、スマートにクロージングをしていくのだ。

世の中で「トップ営業マン」と言われる人はこの手のタイプが多いだろう。

ただし、期待感を煽ってクロージングすることも多く、期待通りの効果がでなかったときは信頼は失うケースもある。

一発勝負の商材(主にCtoCの商材)であれば問題ないが、BtoBのように高額かつ長期的な関係性が重要な営業においては注意が必要だ。

信頼を得る営業マン

信頼を得る営業マンは顧客の利益が正義である。
自分自身の売上目標よりも、お客さんが喜んでくれることを優先する。

「この商品を売ることができれば自分の売上目標を達成できる!」という状況であっても「この商品を売ることはお客さんのためになるのだろうか?」と考え、販売を躊躇することもある。

この営業スタンスは売上目標を掲げる会社から見ると頼りないが、顧客からの信頼を獲得し、長期的に見ると会社にメリットを生み出すことも多い。

最強の営業マンとは?

「売上を上げる営業マン」、「信頼を得る営業マン」を単純に比較することは難しい。

「売上を上げる営業マン」は目の前の売上を上げてくれるので会社にとっては貴重な存在だが、長期的な信頼が必要なBtoBビジネスにおいてはマイナスに働くケースがあるし、「信頼を得る営業マン」は顧客からの長期的信頼を勝ち取ってくれる貴重な存在だが、短期的な売上を上げられない点はマイナスに働くケースがある。

では、どのような営業マンが最強の営業マンなのだろうか?

結論からいうと二面性をもった営業マンが最強の営業マンである。
クライアントの業績、投資意欲、リスクに関する考え方に応じてスタンスを変えられる営業マンだ。

業績が良いクライアントへの対応

大きな利益を出している業績が良いクライアントは新たな投資をどんどん行ない、失敗に寛容なケースが多い。むしろ挑戦(投資)しないことをマイナスと見ていることもある。

このようなクライアントに「売上を上げる営業マン」を担当させると、様々な商品を受注し、様々なトライを行なっていく。購入による成功も失敗もあるが、業績が良く、失敗に寛容なクライアントはトライすることも評価してくれるので信頼関係を継続することができるのだ。

逆に「信頼を獲得する営業マン」を担当させても「費用対効果」を考えながら正しく投資をしていくので、マイナス評価を受けることはない。

しかし、投資を考え、失敗を恐れないクライアントは慎重な営業マン(=信頼を獲得する営業マン)よりも積極的に提案をする営業マン(=売上を上げる営業マン)を評価するだろう。

会社にとっても信頼関係が維持できるのであれば「売上を上げる営業マン」が良いのは明らかである。

業績が悪いクライアントへの対応

逆に業績が悪いクライアントは投資に慎重だ。
費用対効果を意識し、リスクが高い投資は避ける傾向にある。

このタイプのクライアントに対してリスクが高い商品を積極的に提案したり、無理やりクロージングする営業マンは信頼を大きく失うだろう。

むしろ、クライアントが「買いたい」と言ってもリスクを考え「今は買わないほうが良い」と正直に言える営業マンは絶大な信頼を得ることができる。

二面性を持つ営業マンが最強の営業マン

クライアントの業績状況・組織状況・投資に関するスタンスを正しく把握し、「売上を上げる営業マン」のスタンス、「信頼を得る営業マン」のスタンスを使い分ける営業マンこそ最強の営業マンと言える。

しかし、この二面性を持つのは簡単ではない。
クライアントの状況を深く知らなければ使い分けることができないからだ。

ここは「クライアントよりもクライアントのことを知る」ことが重要。
クライアントの業績、組織状況、競合、マーケット調査等の事前準備をしっかり行ない、提案の臨むことこそがBtoBにおける最強の営業マンへの第一歩である。