起業家が考えるべき人生の優先順位

人生の優先順位とは

サラリーマン時代の私は仕事最優先の人間。
毎日終電かタクシー帰宅で、家庭を顧みない生活を送っていた。

当時の私の優先順位は

第1位:仕事
第2位:友人・同僚
第3位:家族

だったと思う。

しかし、起業した1年目に第一子、起業4年目に第二子が産まれたことで生活が激変。
今までは仕事最優先の私を許してくれていた妻とも話し合い(夫婦喧嘩ともいう)を行なう回数が増えていった。

華やかな生活に見える経営者が、家庭を顧みなかった結果、不幸な生活に陥いるケースは本当に多い。

何故、多くの経営者たちは家庭を顧みなかったことを後悔しているのか?
本当の幸せとは何だろうか?

私は自分の現状に危機感を持ち、人生の優先順位を考え直さなければいけないと心から思った。

私の優先順位

「自分が人生で優先すべきものが何か?」を考えていたとき、頭に浮かんだ小学生時代の出来事がある。
それは父と祖母(父の母)のエピソードだ。

私の父は工作機械を設計・製造する会社を40年以上経営していた(現在は兄が継いでいる)が、土日も働き続ける仕事最優先の人間。取引先からの億単位の不渡りを受けたり、他人の連帯保証人になったことで受けた多額の借金を返しながら猛烈に働いていた。

そんなある日、北海道に住む祖母が危篤状態になり、いつ死を迎えてもおかしくない状態になってしまったのだ。

父は早朝の飛行機で祖母のもとに駆け付ければ良かったのだが、多忙を極めていた当時・・・。
その日も父は仕事を優先し、夕方の飛行機で北海道に向かう選択をした。

その結果、祖母は父が到着する前に亡くなってしまい対面することができなかったのだ。

私は小学生ながら「祖母が生きているうちに父に会えなかった」という事実が悲しくて号泣した。

当時も今も、仕事を優先した父を責める気持ちは全くないし、家族や従業員の生活を優先した父の判断も十分理解できる。

ただ、私はどんな重要な仕事があったとしても「早朝の飛行機で駆け付ける人間になりたい」と思ったし、社員にも「家族最優先」の判断を要求する会社にしたいと思ったのだ。

両立する方法を考える

「経営者は家族よりも会社を優先しなければいけない」と言われることがあるが、私が考え抜いて辿り着いた人生の優先順位は

第1位:家族
第2位:仕事(会社と会社の仲間)
第3位:友人・同僚

であった。

しかし、単純にいつでも家族を優先するわけではない。
「家族」と「会社」のどちらかを選ばなければいけない状況になったときは、間違いなく「家族」をとることを決めたのだ。

・本当にその飲み会(付き合い)は必要だろうか?
・本当にそのゴルフ(付き合い)は必要だろうか?

という判断、

・その仕事は家族との時間よりも重要な仕事か?
・その仕事は別の時間にできないのか?

という判断まで、突き詰めれば変えられる優先順位が沢山ある。

また、どうしても仕事を優先せざるを得ない状況になったときは「家族」と「仕事」を両立を考える。

経営者としては

・会社の懇親会を家族参加型にする。
・社員旅行を家族同伴にする。

といった方法をとり、ビジネスマンとしては

・自宅で仕事できる体制を整える
・SNS・ネット・TVなど仕事以外の無駄な時間を削る

といった方法をとる。

多忙な人ほど「仕事」と「家族」を両立させる選択肢があることを理解しよう。

サイバーエージェントの事例

私が共感した他社のエピソードを紹介したい。

数年前になるが、サイバーエージェントの藤田さんがfacebookで以下のように投稿していた。

『先々週の土曜日のあした会議。日高が事前の役員会で「申し訳ないけど当日、子どもの運動会があって夕方まで行けない」と言って大幅に遅れて参加したけど、いま思い出しても彼は全く正しい行いをしたと思う。』

おそらく、役員の日高さんが『子供の運動会があるから会議を欠席する』と言っていたら藤田さんは日高さんの行動を『正しい選択』とは言わなかっただろう。

役員としての責任を全うしていないと判断され、将来的に「役員を下ろす」という選択が行われる可能性もあったと思う。

藤田さんが『正しい選択』と言った背景には、

  • 「欠席する」のではなく「運動会が終わってすぐに会議に駆け付ける」という行動をしたこと。
  • 「関係者に遅刻することをできるだけ早く通知」し、自分自身の遅刻による影響減少に努めたこと。
  • (これは書いてないが)おそらく日高さん自身が遅刻による影響減少のために事前準備や根回しを行ない、責任を全うしたこと。

があったのだと思う。

これが私自身が感じる「両立する方法を考える」ということに近い。
日高さんは「家族」と「会社」を両立するために、やり方を工夫し、努力をしたのではないだろうか。

ディー・エヌ・エーの事例(両方を実現できないときの経営判断)

ディー・エヌ・エーの南場さんは、旦那さんの病気をキッカケに社長を退任したが、これは南場さんの優先順位の1位が「家族」であった証だと思う。

私は「役職とは責任である」と考えている。
例えば、育児をしているママであっても責任を全うできるのであれば昇進して役員や管理職になるべきだし、育児を理由に責任を全うできないのであれば昇進はできないという考え方だ。

私自身も「家族」を優先順位の1位に置いているし、「仕事」と「家族」を両立させるために「すべてはやり方と努力次第」だと考えているが、南場さんのように「仕事」と「家族」を両立できなくなる瞬間があるかもしれない。

そのときには自分自身の優先順位に従って、社長を辞任することも考えなければいけないのだと思う。

「まだまだ小さい会社なのに気が早い」と思われてしまうかもしれないが、起業をキッカケに家族を崩壊させてしまう経営者が多いのも事実。

不幸な人生を歩まないために、確固たる「人生の優先順位」を決めることこそ、起業家にとって重要なことではないだろうか。