良い人になりたいのか?良い経営者になりたいのか?

「良い人=良い経営者」ではない

「大野君は『良い人』になりたいの?『良い経営者』になりたいの?」

これはサラリーマンをしながら起業準備をしている頃、ある社長から言われた言葉だ。

①良い人とは
損得に関係なく人が喜ぶことをする人

②良い経営者とは
元となる資本を元に継続した「投資」「回収」の仕組み作り、運営が上手い人

と定義される。

この質問は「理想的な経営者=全ての従業員から好かれる人」と勘違いしていた当時の私にとって重要なアドバイスだった。

事実として、誰からも好かれる「良い人」が社長の会社はあまり儲かっていないし、長年に渡って会社の規模が小さいままというケースも多い。

逆に、従業員に厳しい営業目標を与え、従業員を厳しく行動管理している会社は、社長が社員から嫌われていたとしても、大きな利益を上げ、急成長しているケースが多い。
※稀に社長が「良い人」なのに儲かっている会社がありますが、そこには厳しいNo.2が漏れなく存在している。

「良い人」とは「受け手」が決める

「良い経営者とは何か?」を考えていた私は、ハードマネジメントでありながら多くの部下から慕われている1人の営業マネージャーに話を聞いた。

・どうやってマネジメント能力を身に付けたのか?
・営業チームが目標達成し続けられるのはなぜか?

その営業マネージャーはこう答えた。

「俺にマネジメント能力なんてないよ。やるべきことをやれば売れるんだから、そう動くように指導しているだけ。」

「でも、厳しく指導してもメンバーから慕われるのはマネジメントのポイントがあるのではないですか?」

「そんなものはない。メンバーが優秀で成長意欲が高いから俺のやり方を受け入れてくれてるだけ。今のメンバーは優秀な奴ばかりだけど、昔は俺のことを嫌っているメンバーも沢山いたよ。そういう奴に限って成長意欲も低いし、やるべきことをやらないから売れないんだけどね。」

この営業マネージャーの言葉をまとめると以下の通りだ。

①やるべきことをちゃんとやるチームをつくれば業績は上がる。

②成長意欲が高い人は「厳しさ」を受け入れられる。
(=「厳しく指導してくれる人が「良い人」)

③成長意欲が低い人は「厳しさ」を受け入れられない。
(=甘やかしてくれる人が「良い人」)

この上司の言葉を聞いた私は、成長意欲の低いサラリーマンが居酒屋で上司を愚痴っている光景が頭に浮かんだ。

サラリーマンの愚痴の原因が上司なのか本人なのか?おそらく8割以上は本人の問題だろう。

経営者やマネージャーが成長意欲の低い社員に対して「良い人」になろうとすると、その人に言うべきこと言えず、甘えが蔓延した会社になってしまう。

だからこそ、この営業マネージャーのように例外なく平等に指導できる組織、つまり「やるべきことをちゃんとやる組織をつくること」が『良い経営者』の仕事なのだと理解した。

目指すべき経営者像とは?

私が目指すのは「やるべきことをちゃんとやる組織をつくること」であり、成長意欲が高い人から「良い人」と思ってもらえる経営者になることである。

そして会社として重要なことは「成長意欲がない人材を採用しない」ことだ。

こう考えると私が以前在籍していたリクルートを初め、一流と言われる企業が新卒採用に力を入れている理由が深く理解できる。厳しい指導が受け入れられる成長意欲の高い人材を集めることができれば、マネジメントもスムーズになり、会社の業績も上がり続ける。

経営者自身の成長も必要だ。
優秀な人材をマネジメントできる能力と人間性を休むことなく獲得し続けなければ、優秀な人材は入社してくれない。これが経営者として一番大変なことだと私自身も感じている。

★追記
成長意欲が低い人に対して意識変化を促す経営者が「良い経営者」だという考え方もある。
確かに世の中には事業成長を優先し「成長意欲が低い人を切り捨てるタイプの経営者」と「成長意欲が低い人を何とか育てようとする経営者」の2パターンがいる。
世間からの評価は「成長意欲が低い人を何とか育てようとする経営者」の評価が高いだろう。
しかし、良い経営者を『元となる資本を元に継続した「投資」「回収」の仕組み作り、運営が上手い人』と定義すると「成長意欲が低い人を切り捨てるタイプの経営者」のほうが評価されるべきだ。
社員数が増えると、どうしても成長意欲が低い社員が紛れ込む。このような社員を何とか育てるのか、切り捨てるのか、または第三の選択肢を考えるのかは、1つ大きな経営課題になるだろう。